確定申告で複数のFX口座の損益をまとめるには?税金の支払いを正しく行う方法

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「A社では100万円儲かったけれど、B社では50万円損してしまった……」というように、複数のFX会社を使い分けているトレーダーは多いはずです。こうしたとき、それぞれの口座の結果をバラバラに考えるのではなく、すべてをひとまとめにして税金の計算ができることをご存知でしょうか。

この記事では、複数のFX口座の利益と損失を合算する「損益通算」の正しいやり方を解説します。手続きを正しく行うことで、支払う税金を大幅に減らせる可能性もあります。初心者の方でも迷わず進められるよう、必要書類の集め方から具体的な入力のコツまで、順を追って見ていきましょう。

目次

複数のFX口座の損益はまとめて計算できる?

FXの税金計算において最も大切な概念が「損益通算(そんえきつうさん)」です。これは、同じ年に発生した利益と損失をガッチャンコして、最終的に残ったプラス分に対してのみ税金をかける仕組みのことです。複数の口座を持っているなら、これを活用しない手はありません。

ここでは、損益通算がなぜ節税に繋がるのかという基本から、合算できる範囲について整理します。まず、自分が使っている口座がひとまとめにできるグループなのかどうか、その全体像を把握することから始めましょう。

利益と損失を相殺して税金を安くする「損益通算」

損益通算とは、簡単に言えば「儲け」から「赤字」を引き算することです。例えば、一つの口座だけで20万円の利益が出ていれば、その20万円に対して約20%の税金がかかります。しかし、別の口座で10万円負けていた場合、これらを合わせることで「今年の利益は10万円だった」として申告が可能です。

この引き算を行うことで、本来払うはずだった20万円分の税金が、10万円分の税金で済むようになります。

例えば、以下の表のように計算します。

口座損益の結果合計(課税対象)
A証券50万円のプラス
B証券30万円のマイナス
合算結果20万円のプラス

このように、負けている口座があるときほど、複数の口座をまとめるメリットは大きくなります。

注意点として、何もしなければ税務署はあなたの別の口座の損失を知ることができません。自分から「この口座とこの口座をまとめます」と申告することで、初めてこの恩恵を受けられるのです。

国内FX業者同士なら自由に合算が可能

国内でサービスを提供しているFX会社であれば、基本的にどの組み合わせでも損益をまとめることができます。SBI FXトレード、楽天証券、DMM FX、GMOクリック証券など、複数を使い分けていても問題ありません。

これは、国内のFX業者がすべて「申告分離課税」という同じグループの税制ルールで動いているためです。

例えば、ドル円をA社で取引し、メキシコペソをB社で取引している場合でも、それらの結果はすべて合算の対象になります。

また、取引の回数や期間も関係ありません。

1月に行った取引も12月に行った取引も、同じ年(1月1日〜12月31日)の分であれば一つの箱にまとめて計算します。国内の業者をメインに使っているトレーダーにとっては、非常にシンプルで分かりやすい仕組みと言えるでしょう。

CFDやバイナリーオプションの損益ともまとめられる

さらに便利なことに、FX以外の特定の投資商品とも損益を合算できます。「先物取引に係る雑所得等」という同じカテゴリーに含まれるものであれば、FXの損失でCFDの利益を消したり、その逆も可能です。

合算できる代表的な取引は以下の通りです。

  • 日経225先物やTOPIX先物などの「先物取引」
  • 金や原油などを扱う「CFD取引」
  • 国内業者が提供する「バイナリーオプション」
  • 取引所FXである「くりっく365」

例えば、FXで10万円負けたけれど、金のCFDで15万円儲かったという場合、これらを合わせて「プラス5万円」として申告できます。

投資の幅を広げている人ほど、こうした「横の繋がり」を活用した計算が重要になります。

自分の行っている取引がこのグループに入るかどうか、事前に確認しておきましょう。反対に、株の現物取引などはグループが違うため、FXの損益とまとめることはできません。

合算できる口座とできない口座の境界線

「FXなら何でもまとめられる」というわけではありません。税金の世界には厳しい境界線があり、これを間違えて申告すると、後から修正が必要になったりペナルティが発生したりします。

特に初心者が迷いやすいのが、「国内の口座」と「海外の口座」の違いです。この章では、税金の計算上、一緒にできるものと、絶対に分けて考えなければならないものの違いをはっきりと整理します。自分の資産がどこにあるのかを思い浮かべながら確認してください。

国内FXと海外FXは一緒に計算できない

最も注意すべきなのが、国内FX業者と海外FX業者の損益は合算できないという点です。たとえどちらもFX取引であったとしても、税金の種類が根本的に異なります。

国内FXは「申告分離課税」ですが、海外FXは「総合課税」というグループに属しています。

例えば、国内FXで50万円負けて、海外FXで50万円勝ったとします。

このとき「合計ゼロ円だから税金なし」とはなりません。国内FXのマイナスはそのままに、海外FXの50万円に対してガッツリと税金がかかってしまいます。

同じFXという名前でも、ルールが違うチームの試合結果を一緒にはできないようなイメージです。

海外FXを使っている場合は、国内FXとは全く別の計算シートを用意しなければならないことを覚えておきましょう。

海外FXは「総合課税」として別に申告する

海外FXで得た利益は、お給料などの他の所得と合算して税率が決まる「総合課税」になります。国内FXの一律20.315%という税率とは異なり、稼げば稼ぐほど税率が上がっていく仕組みです。

そのため、海外FXの利益を申告する際は、給与所得などと一緒に計算機にかけます。

海外FXの税金計算のステップを提示します。

  • 海外FXの1年間の純利益を出す
  • 給与所得など、他の総合課税の所得を足す
  • 合計額から所得控除(基礎控除など)を引く
  • 残った額に応じた累進税率をかける

例えば、会社員の方が副業で海外FXをしている場合、本業の年収が高いほど、海外FXの利益に対する税負担も重くなります。

国内FXはいくら稼いでも税率が変わらない「定額制」のようなものですが、海外FXは稼ぐほど高くなる「従量課税」のようなイメージです。

この違いがあるため、両者の損益を混ぜて計算することは法律で禁止されています。

仮想通貨(暗号資産)の損益とも合算は不可

ビットコインなどの仮想通貨で出た損益も、基本的にはFX(国内)の損益とまとめることはできません。仮想通貨の利益も、海外FXと同じ「総合課税」のグループに入るからです。

最近ではFX会社が仮想通貨のCFDを提供していることもありますが、その中身がどちらの税制に当てはまるかは非常に重要です。

以下の表で、主要な投資商品のグループ分けをまとめました。

グループA(申告分離課税)グループB(総合課税)
国内FX、くりっく365海外FX
国内CFD、先物取引仮想通貨(暗号資産)
バイナリーオプション副業の収入、雑所得

例えば、国内FXで利益が出ていて仮想通貨で損失が出ている場合、残念ながら仮想通貨の負けでFXの税金を安くすることはできません。

このように「混ぜてはいけない組み合わせ」を知っておくことが、正しい確定申告の第一歩です。

自分が持っている口座がどちらのグループに属しているか、ログイン後のマイページなどで「税制の種類」を確認する習慣をつけましょう。

確定申告を始める前に各社から集めるべき書類

計算をスムーズに進めるためには、事前の道具(書類)揃えが欠かせません。申告の時期になってから「あの書類がない!」と慌てないように、早めに準備に取り掛かりましょう。

この章では、複数の口座をまとめる際に絶対に必要な書類と、その入手方法について詳しく説明します。最近は紙の郵送ではなく、インターネット上で自分で手に入れるスタイルが主流ですので、操作の仕方を今のうちに確認しておきましょう。

「年間取引報告書」をすべての口座分ダウンロードする

確定申告のメインとなるのが「年間取引報告書」です。これは、1月1日から12月31日までの間に、その口座でいくら利益が出て、いくら手数料を払ったのかが1枚にまとめられた公式な書類です。

申告するすべてのFX会社のサイトにログインし、この書類をダウンロードしてください。

例えば、A証券とB証券の2つの口座をまとめるなら、2枚の報告書が必要になります。

ほとんどの会社では、翌年の1月中旬から下旬にかけて、マイページ内の「報告書」や「電子交付」といったメニューから閲覧・保存ができるようになります。

これがないと正確な利益の額が確定できないため、まずは全ての利用口座にログインして、書類が発行されているかチェックしましょう。

電子交付された報告書は印刷して保管しておこう

ダウンロードした「年間取引報告書」はPDF形式であることが多いですが、念のために紙に印刷しておくことを強くおすすめします。

現在はスマホ申告(e-Tax)であれば、書類の提出そのものは省略できる場合が多いですが、税務署から「中身を見せてください」と後日連絡が来ることもあるからです。

印刷して保管しておくメリットをリストアップしました。

  • 手元に置くことで、PC画面を見ながらの入力作業が楽になる。
  • 5〜7年間の保存義務があるため、データの紛失に備えられる。
  • 複数の口座の数字を合計する際、メモを書き込みやすい。
  • 万が一の税務調査のときに、すぐに提示できる。

例えば、スマホの画面だけで2社分の数字を確認しながら入力するのは、誤入力の元になります。

紙にプリントして、A社の利益、B社の損失、とマーカーを引いておくだけで、計算ミスを劇的に減らすことができます。自分を守るためのバックアップとして、必ず形に残しておきましょう。

経費として計上する領収書やレシートをまとめる

FXの税金を安くする魔法の道具が「経費」です。取引のために使ったお金を利益から差し引くことができます。その証明となる領収書やレシートも、一つの封筒にまとめておきましょう。

「これは経費になるかな?」と迷うものでも、FXに関連するものであれば捨てずにとっておくのがコツです。

具体的な準備の仕方は以下の通りです。

  • 日付順に並べておく
  • 合計金額をメモしておく
  • FXに関係があることをメモ(「FXセミナー代」など)を追記する

例えば、FXの勉強のために買った本や、有料のチャートツール代などは立派な経費です。

こうした小さな積み重ねが、最終的な税金額を左右します。複数の口座をまとめる作業と並行して、1年間にFXのために使ったお金の「証拠」を整理していきましょう。

複数口座の利益と損失を合算する具体的な手順

書類が揃ったら、次はいよいよ数字の集計作業です。バラバラの会社から届いた数字を、どのように一つの合計値にまとめていくのか、その計算のルールを学びましょう。

この章では、実際の足し算・引き算の順番を詳しく解説します。複雑なことは何もありません。3つのステップを踏むだけで、あなたの正しい所得額が導き出されます。計算ミスを防ぐための注意点も併せて提示します。

すべての口座の「損益合計」を単純に足し算する

まずは、各社の「年間取引報告書」に記載されている損益(実現損益)の数字をすべて足し合わせます。

ここで大切なのは、プラスの数字だけでなく、マイナスの数字もそのまま足すということです。

例えば、以下のような状況を想定してみてください。

  • A証券:+100,000円
  • B証券:−40,000円
  • C証券:+10,000円

この場合、100,000 + (−40,000) + 10,000 = 70,000円が、あなたの口座間の合算結果になります。

この計算を自分で行うことで、申告書に書くべき「収入」の正体が明らかになります。

注意点として、決済していない「含み損益」は含めないでください。あくまで、報告書に載っている「確定した数字」だけを使うのが鉄則です。

取引のために支払った必要経費を差し引く

合算した損益の合計から、今度は集めておいた「必要経費」を引き算します。これで、本当の意味での「FXの所得」が決まります。

例えば、先ほどの合算結果が70,000円で、1年間の書籍代やセミナー代が15,000円だった場合、実際の所得は55,000円になります。

  • 合算利益:70,000円
  • 必要経費:15,000円
  • 最終所得:55,000円

この「55,000円」という数字に対して税金がかかるわけです。

経費を引く前の金額で申告してしまうと、本来払わなくていい税金まで払うことになり、損をしてしまいます。

複数の口座をまとめる最大の理由は節税ですから、この引き算の工程は最も丁寧に行いましょう。領収書の合計を出すときは、電卓を2回叩いて数字が合っているか確認するくらいの慎重さがあってちょうど良いです。

最終的な「課税対象額」を算出する方法

最後に、すべての計算を終えたあとの数字が「20万円」を超えているかどうかを確認します。

一般的な会社員の方であれば、この最終的な所得が20万円以下であれば、所得税の確定申告をする必要はありません(※ただし住民税は別途必要になる場合があります)。

例えば、合算して経費も引いた結果が18万円であれば、基本的には税務署への申告は不要です。

計算結果申告の要否(会社員の場合)理由
20万円を超える必要納税の義務が生じるため
20万円以下不要(所得税)少額不申告の特例があるため
マイナス(赤字)推奨翌年以降に損失を繰り越せるため

もし計算結果がマイナスになった場合は、申告の義務はありませんが、「申告したほうが絶対にお得」です。

なぜなら、その赤字を来年に持ち越して、来年の利益と相殺できる「繰越控除」が使えるからです。計算の結果がどうあれ、数字をまとめたという事実は大切に扱いましょう。

利益から差し引ける「経費」として認められるもの

FXの税金を抑えるためには、何が必要経費として認められるのかを正しく知ることが重要です。むやみに何でも経費にすると税務署から指摘されますが、認められるべきものを漏らすのはもったいないことです。

ここでは、FXトレーダーにとっての代表的な経費を3つのカテゴリーで紹介します。自分が支払ったお金の中に、経費として計上できるものがないか、1年間の家計を振り返りながら確認してみましょう。

取引の勉強のために購入した書籍や新聞代

FXのテクニックを学ぶための「投資本」や、相場情報を得るための「経済新聞」の代金は、最も認められやすい経費の一つです。

書店で購入した本はもちろん、Amazonなどのネット通販で買ったKindle本も、注文履歴から領収書を発行すれば経費にできます。

例えば、1冊2,000円の専門書を月に1回買っていれば、年間で24,000円の経費になります。

また、日経新聞などの定期購読料も、投資の判断に役立てているのであれば経費として計上可能です。

「自分がトレードで勝つために必要だった知識代」は堂々と経費にしましょう。ただし、漫画や小説など、投資に直接関係のないものは当然ながら認められません。

有料セミナーへの参加費や会場への交通費

プロの投資家から教わるセミナーの参加費や、投資関連のイベントに行くための電車代、バス代なども経費に含めることができます。

最近増えているオンラインでの有料ウェビナー代も、決済画面の控えがあれば対象になります。

移動にかかった交通費については、領収書が出ないことも多いため、以下のようなリストを作っておくと安心です。

  • 日付:202X年2月10日
  • 行き先:〇〇FXセミナー会場
  • 金額:往復840円
  • 理由:セミナー参加のため

例えば、地方から東京のイベントに参加した際の宿泊費などは、その目的が100%投資であれば認められるケースがあります。

高額なセミナーの場合は、後で説明を求められることもあるため、パンフレットなども一緒に保管しておくとより確実です。

パソコンや通信費は「家事按分」が必要な場合もある

トレードに使用しているパソコン代や、スマホの通信料、自宅の光回線の費用も経費にできます。ただし、これらは「プライベートでも使っている」ことが多いため、「家事按分(かじあんぶん)」という計算が必要です。

家事按分とは、全体の費用のうち「何割をFXのために使っているか」を自分で決めて、その分だけを経費にすることです。

例えば、1ヶ月のスマホ代が10,000円で、そのうち2割の時間をFXのチャートチェックに使っているなら、2,000円を経費にする、といった具合です。

家事按分の考え方の目安を提示します。

  • パソコン:1日の使用時間のうちFXに充てる割合
  • インターネット代:FX専用に使っているなら100%、兼用なら20〜30%程度
  • 電気代:トレードをしている時間分を数%程度

100%経費にすることは難しいですが、数割であっても12ヶ月分合わせれば大きな金額になります。

自分が納得でき、かつ税務署にも説明できる「常識的な範囲」で計算を取り入れましょう。

確定申告書の作成と入力を進める方法

計算と経費の整理が終わったら、いよいよ申告書の作成です。今は国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の指示に従うだけでスマホやPCから簡単に書類が作れます。

ここでは、複数の口座の数字を具体的にどこに入力すればいいのか、そのポイントを絞って説明します。難しい用語に惑わされず、正しい場所に数字を置いていく作業を始めましょう。

「先物取引に係る雑所得等」の欄に合計額を記入する

入力の際、最も重要な場所が「所得の種類」の選択です。FXの損益は「先物取引に係る雑所得等」という項目に入力します。

この項目を選ぶと、各社ごとの数字を書き込む専用のページが開きます。

ここで、先ほど算出した「すべての口座の合計額」を書き込んでいきます。申告書の種類としては「申告書第三表(分離課税用)」というものを使用することになります。

例えば、A社で50万、B社で−30万だったなら、合計の20万円を収入の欄に書きます。

その後、別途用意されている経費の欄に、合算した経費の総額を入力します。これで、システムが自動的に差し引き計算を行い、あなたが払うべき税額をはじき出してくれます。

複数の業者名は「〇〇証券ほか」とまとめてもOK

申告書の入力画面には、どこの業者で取引したかを書く欄があります。口座が2〜3個であれば、すべて書き並べても良いですが、あまりに数が多い場合は「〇〇証券 ほか」という書き方で省略しても構いません。

大切なのは業者名そのものよりも、合計された数字が合っているかどうかです。

詳しい内容を書く場合のヒントを提示します。

  • 業者名:最もメインで使っている証券会社名を書く
  • 種類:外国為替証拠金取引 と記入
  • 決済年月日:12月31日 と記入(1年分のまとめのため)

例えば、5社使っているからといって、5社分の入力を繰り返す必要はありません。

年間取引報告書をすべて手元に持っていれば、入力作業は1社分にまとめてしまっても実務上は問題ありません。ただし、手元の報告書の合計と、入力した数字が1円の狂いもなく一致していることだけは、二重、三重に確認しましょう。

スマホからe-Taxで申告を完結させる手順

現在は、マイナンバーカードがあればスマホ一台で申告を完了させることができます(e-Tax)。税務署に足を運んだり、書類を郵送したりする手間が一切かからないため、非常に便利です。

スマホ申告の大きな流れは以下の通りです。

  1. 国税庁公式サイトの「作成コーナー」にアクセス
  2. マイナンバーカードをスマホで読み取る
  3. 画面のガイドに従って収入(FX合算)と経費を入力
  4. 送信ボタンを押して完了

例えば、夜の空いた時間にベッドの上でポチポチと進めることも可能です。

途中で保存もできるため、一度に終わらせる必要もありません。複数の口座がある場合は入力項目が少し多くなりますが、スマホのガイドは非常に親切にできているため、迷うことは少ないはずです。デジタル技術を賢く使って、サクッと終わらせてしまいましょう。

損失が出たときこそ確定申告をすべき理由

「今年はトータルで赤字だったから、面倒な確定申告はしなくていいや」と考えているなら、それは大きな間違いです。FXには、負けた分を「将来の貯金」に変えられる非常に強力なルールがあります。

この章では、マイナスになったときこそ申告すべき2つのメリットについて解説します。今の負けを無駄にせず、来年以降の自分を助けるための「守りの申告」について理解を深めましょう。

3年間利益からマイナスを引き継げる「繰越控除」

FXの赤字を申告しておくと、その損失を最大3年間にわたって、将来の利益から差し引くことができます。これを「繰越控除(くりこしこうじょ)」と呼びます。

例えば、今年50万円負けて、来年50万円勝ったとします。

  • 申告しない場合:来年の50万円に約10万円の税金がかかる。
  • 申告した場合:今年の負けと来年の勝ちを相殺して、来年の税金が0円になる。

このように、10万円という大金が手元に残るかどうかの瀬戸際になります。

今年負けているということは、来年以降に勝つための「税金の割引券」を配られているのと同じです。

この割引券は、確定申告をしておかないと有効期限(3年)以前に消滅してしまいます。今は悲しいマイナスの数字も、将来の自分へのプレゼントだと思って、しっかりと手続きをしておきましょう。

損失を翌年に持ち越すための専用書類の書き方

損失を繰り越すためには、「所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」という専用の書類を一緒に提出する必要があります。

難しそうな名前ですが、e-Taxを使えば「昨年以前の損失はありますか?」という質問に答えて数字を入れるだけなので、作成は簡単です。

申告に必要な情報の整理

  • 今年の正確な損失額(合算結果)
  • 昨年、一昨年に申告した損失の残り(あれば)
  • 今年の経費の額

例えば、一昨年から負けが続いている場合、それらもすべて積み上げておくことができます。

一度この流れを作ってしまえば、毎年「去年の負けがいくら残っているか」をシステムが覚えてくれるようになります。

赤字を記録し続けることは、トレーダーとしての「負け」を認めることではなく、長期的な「勝利」を確実にするための戦略的な行動です。

毎年申告を続けることで節税効果を維持できる

繰越控除を受けるためには、たとえ取引がない年や、さらに負けを重ねた年であっても、毎年欠かさず確定申告を続ける必要があります。1年でも申告を忘れると、それまで積み上げてきた「損失の権利」が途切れてしまうからです。

例えば、3年間の赤字を積み上げてきたのに、4年目に「忙しかったから」と申告をサボってしまうと、5年目に大勝ちしたときに昔の負けをぶつけることができなくなります。

「FXを続けている間は、毎年必ず1回は税務署へ報告する」という習慣を持ちましょう。

習慣化するためのヒントを提示します。

  • 毎年1月のカレンダーに「年間取引報告書の収集」とメモする。
  • 税務署からの通知(はがきやメール)をこまめにチェックする。
  • 負けているときこそ、自分の資産状況を直視する機会にする。

コツコツと申告を続ける姿勢は、トレードの規律を守る姿勢にも繋がります。

将来、大きな利益を手にしたときに笑えるよう、今のうちから正しい手続きをルーティン化してしまいましょう。

税金の支払いで間違えやすい落とし穴

複数の口座をまとめて申告する際には、一人で悩んでいると陥りやすい「うっかりミス」がいくつかあります。後から税務署から問い合わせが来たり、修正を求められたりするのは、精神的にもかなりの負担です。

最後に、申告を終える前に必ずチェックしてほしい3つのポイントを整理しました。これさえクリアしていれば、あなたの確定申告は完璧です。安心して春を迎えられるよう、最終確認を行いましょう。

20万円以下の利益でも住民税の申告は必要

所得税(国に払う税金)には「20万円以下の利益なら申告不要」というルールがありますが、住民税(市区町村に払う税金)にはそのルールがありません。

つまり、FXの合計利益が10万円だった場合、所得税の申告はしなくていいですが、お住まいの役所には「10万円儲かりました」と報告し、住民税を払う必要があります。

「税務署に行かなくていいなら、何もしなくていいんだ」と勘違いして、後から市役所から督促が来るのはよくある失敗例です。

住民税の申告は、お住まいの自治体の窓口や郵送で行えます。

もし面倒であれば、20万円以下であってもあえて「所得税の確定申告」をしてしまえば、そのデータが自動的に役所へ回るため、住民税の手続きを個別にする必要がなくなります。結局のところ、すべてをまとめて確定申告してしまうのが一番の近道です。

源泉徴収ありの「特定口座」がFXにはない点に注意

株の取引をしている人なら、「特定口座(源泉徴収あり)」を選べば勝手に税金を引いてくれるから楽だ、という感覚があるかもしれません。しかし、残念ながらFXにはその仕組みが存在しません。

どれだけ有名な証券会社を使っていても、FXの利益からあらかじめ税金を天引きしてくれるサービスはないのです。

つまり、FXで利益が出た以上は、自分自身で計算し、自分自身で納税する作業が100%必要になります。

例えば、「株と同じ感覚で放置していたら、実は無申告の状態になっていた」というケースも散見されます。

FXは「すべて自己責任、自己申告」の世界であることを肝に銘じておきましょう。複数の口座があるならなおさら、誰もあなたの代わりにまとめてはくれないのです。

入力する数字を「税込」か「税抜」か確認する

非常に細かい点ですが、経費を入力する際などに、消費税をどう扱うかもポイントです。多くの個人トレーダーの場合、「税込」の金額をそのまま入力して問題ありません。

例えば、2,200円(税込)の本を買ったなら、経費の欄には「2,200」と記入します。

注意すべきは、FX会社からの報告書に載っている数字です。

  • 利益の額:通常はすべて確定した数字が載っている。
  • 手数料:既に引かれた後の数字なのか、別途記載されているのか。

これらを混同して二重に引いたり、足し忘れたりしないように注意してください。

基本的には「年間取引報告書」に記載されている、一番大きく太字で書かれている「年間の損益合計」を使えば間違いありません。

最後に、入力した全ての数字をもう一度報告書と照らし合わせ、「1円単位まで合っているか」を確認してください。この一分の狂いもない確認こそが、税務署からの信頼を勝ち取る最大のコツです。

まとめ:正しい合算申告で将来の節税に繋げよう

複数のFX口座の損益をまとめる「損益通算」は、トレーダーに認められた正当な権利です。口座ごとの利益と損失を正しく合算し、さらに学習にかかった経費を差し引くことで、無駄な税金を払わずに済み、効率的な資産形成が可能になります。

  • 国内FX業者同士であれば、損益を自由に合算して相殺できる。
  • 海外FXや仮想通貨はグループが違うため、国内FXとは混ぜてはいけない。
  • 年間取引報告書と領収書を揃え、経費を1円でも多く計上することが節税の鍵。
  • マイナスになった年こそ申告を行い、3年間の「繰越控除」の権利を確保する。

確定申告は、一度やり方を覚えてしまえばそれほど怖いものではありません。むしろ、自分の1年間の取引を数字で客観的に振り返る、絶好の機会でもあります。

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